日本人はマスマーケティングを好むのか?

 具体的にいえば、ミラノのデザイナーはスイス、ドイツ、フランスあたりの国との文化差は日常レベルーバカンスでの旅であってもーで勘がついており、意図せずとも、それを踏まえアイデアを練ろうとします。異文化の日常性です。しかし日本の多くのデザイナーにとっての異文化は非日常的であり、異文化に対して意図的であっても、「ぼんやり」の度合いが高くなります。


 とするならば、日本のデザイナーはターゲットとすべきマーケットをさらに限定的に考えるべきではないか、というのがぼくが思うところです。リチャード・サッパーの「自分にしかできないものをつくる」というスピリットを紹介したところで、ぼくは差別化のためのリサーチをほどほどにすると書きました。いわば公園の柵の向こうまで見ようとしなくていいのだ、もっと柵のなかでじっとベンチを暖めながら考えるべきではないかと、かなり率直に思っています。もちろん、この「ミラノサローネ 2010」の趣旨に沿った、「ヨーロッパ人をターゲットにする」という文脈での話です。


ミラノサローネ 2010(11) 雑種的文化の弱点と克服法::ミラノブログ さまざまなデザイン

 確かに日本のメーカーのデザインは八方美人的になりがちに思います。さらにいえば、デザインに関わらずあるセグメントを区切って攻めるようなマーケティングが不得意なのではないかと思います。
 自分の経験でも、「もっとターゲットを絞った思い切った顧客セグメンテーションをすべき」と考えはするのですが、実際はより幅広い想定顧客層をターゲットにした無難なプランになりがちです。根性なしですね。
 日本企業はこれまで右肩上がりのマーケットを戦っていくなかで、セグメンテーションを意識する必要はありませんでした。そして、その考え方がが今も続いているのではないかと思います。しかし、時代は確実に変化しています。マスという大きな群れはいなくなったのです。