知の生産者を目指そう

 これからの知的生産は、組織ではなく時間の勝負になるのではないでしょうか。
 僕は「在野の時代」が来ると思っているんです。
 大学などの組織に属していなくても、時間が自由に使える状態にあれば、それはとても大きなアドバンテージになる。
 早期にリタイアした人や、結婚して仕事を辞めた主婦などに、高度な知的能力を備えた人が少なくありません。
 事務処理や会議に忙殺されて知的生産の時間がとれない大学教授よりも、時間を自由に使える在野の人が輝く時代が訪れるのではないでしょうか。

 「知」が在るところから、無いところへ移動させるだけで勝てる時代は終わり、新しい知を生産できる人や組織が勝者となる時代がやってきたのだと感じました。

 例えば、大学の先生は「知の製造業」であるべきなのに、従来は「知の貿易商」になることで十分やっていけました。それが求められるマーケットがあったからです。しかし、グーグルはそのマーケットを破壊してしまいました。グーグルは知を偏在させる強力なツールであり、さらに知へのアクセスを無料にしました。情報格差はもう無くなったのです。

 この時代の変化を乗り越えるには、自らが知の一次生産者になるか、専門性を増してより高度な知を扱うかしかありません。ここから導き出されることは、大学のような組織だけでなく情報格差を利用して商いをしていた産業もまた苦しくなるということです。日本での産業構造の変化はまだまだ続くし、これからが本番なのでしょう。

 今後、自分がいかにサバイバルするかの答えは、残業の代わりに知的生産の時間を捻出するところにあるのでしょうね。