移民受け入れ議論について

 基本的に経団連の1000万人移民構想には反対です。その理由は「訓練されていないワーカー移民」の受け入れは「貧困の輸入」であり、問題がありすぎるからというものです。期待されている経済的な底上げも、現実的にはセーフティーネット構築費用や不法移民対策費用などがかさんでマイナスになるのではないかと思っています。
 ところが、2000年代のアメリカの高い消費需要が、移民貧困層によってもたらされたという小論文というかエッセイを見つけてオッと思いましたので、引用します。

「貧困」は、人道的な観点からはもちろん、治安の悪化や都市のスラム化の要因としても、解消していくべき問題であることは間違いないが、その一方で、経済の活力源という見方もできるわけだ。


「移民国家」として成立した米国は、今日でも貧しい国からの移民を受け入れ続けている。そのために、経済が発展しても貧困者はなかなか減らない構図になっているのだが、それは一方で、「活力源としての貧困」を輸入することで、経済を活性化させ続ける構造でもある。02年までの10年間に米国が受け入れた移民の数は842万人にのぼっている。統計外の不法移民も毎年数十万人規模で流入し、不法滞在者の総数は800万人から1,400万人と推定されている。


 貧困層や低所得層の需要は、「作れば売れる」、あるいは「安ければ売れる」、比較的単純な市場を形成しやすい。現在の日本ではほとんど失われてしまったタイプの市場である。


「貧困の輸入」で活力を維持する米国の消費市場::未来経済研究所

 アメリカでは政府による福祉サービスが不十分ですから、移民増による社会コストの増大は限定的と思われます。よって、治安悪化や都市のスラム化に目を瞑れるならば、移民の受け入れは低コストで国内に需要を創出することができる手軽な手段なのかもしれません。
 ただ、同じことを日本でやるかというと賛成はしがたいですね。