アジャイル開発と契約

 SIer がユーザ企業に対してアジャイル開発を利用したシステム開発を提案するとします。Sier は開発手法と同時に契約方法も提案することになりますが、どのような契約が適切でしょうか。

 まず、請負開発契約では困難です。なぜならアジャイル開発の場合、SIer 側には成果物の品質や納期に事前に責任をもつことに過剰なリスクがあります。例えば、システム納品後、ユーザ企業がシステムの仕様に瑕疵を主張した場合、反論が難しくなってしまいます。

 すると、アジャイル開発に向いた契約は、技術者派遣形態でしょうか。ただ、これにも少し問題があります。アジャイル開発は、仕様調整から製造テストまでを特定の人間で行います。言わば、なんでもできるスーパーマン的な人材が必要でしょう。そのようなスーパーマンを提案するときには、非常に高い単金で提案したいところです。しかし、ユーザ企業には技術者派遣の受け入れ価格ガイドラインがあって、あまり桁はずれた単金を受け入れてもらうことは困難です*1

 上記のような前提があるために、SIer は、そのような人材は、通常の請負開発を担当してもらったほうが生産性が高いと考えます。優秀な人材をアジャイル開発に投入することにメリットを感じないでしょう。

 結論。アジャイル開発は、SIer のシステム提案には向きません。どちらかというと、パッケージ開発、社内システム開発に向く開発手法ではないでしょうか。

*1:大手であれば特に厳しいです