自社の業務プロセスが特殊だと考えるのをやめること

 医療や環境、予算管理、国防に至る政策の実行やその評価のために、ITを最大限に活用する方針を掲げているオバマ大統領は、2009年3月、米国連邦政 府の初代CIO(最高情報責任者)にヴィベック・クンドラ(Vivek Kundra)氏を任命した。

 クンドラ氏は、それまで、ワシントンD.C.のCTO(最高技術責任者)を務め、86の行政機関のテクノロジー戦略を担当してきた。Google  AppsなどのSaaSや、オープンソース・ソフトウェアの導入で、ITコストの大幅な削減に寄与したことで有名である。

 クンドラCIOの考え方のベースとなっているのは、まず「政府が特別な存在だと考えるのをやめること」。そして「個々の問題に対して、カスタムメイドのシステムを設計するのではなく、可能な限り既製のソフトウェアを利用すること」である。


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 「政府が特別な存在だと考えるのをやめること」という提言は、民間企業向けに言い換えることもできます。いわば「自社の業務プロセスが特殊だと考えるのをやめること」といったところでしょうか。
 私の経験では、企業の業務プロセスはほとんどが普遍的であり、特殊な業務プロセスはほんの少しだけしかありません。そして、業務の普遍的な部分について「可能な限り既製のソフトウェアを利用すること」ができれば、少ない投資で最大の恩恵を得ることができるのです。

 しかし残念なことに、現実にこの提言を受け入れることは相当な困難を伴います。人は、自分が携わる業務が特別ではないということを認められないからです。この事実をスタッフに受け入れさせるには、リーダーに強い指導力が必要でしょう。トヨタ生産システムの導入と同様に理屈はわかっても、実践が難しい類の話だと思います。